宮大工の話③

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「なんなんだ今の夢は...」妙に寝覚めが良いのを不思議に思いつつ、俺は寝床を後にした。 朝食を頂きながら、神主さんに夢の話をした。 神主さんは味噌汁の椀を持ったまま身じろぎもせずに聞き、そして話し出した。 「ウチの神社は犬神様をお奉りしているのは昨日お話しましたが、本来の姿は二頭の異形神なのです。あなたの夢に出てきた双子の女の子は、恐らくこの神社の神様でしょう。そして、彼女らが話したナミお姉ちゃんとはおそらくお宮のオオカミ様、そして、イザナミ神ではないかと。」 「え、じゃあ黄泉比良坂の...?」 「まあ、この辺りの古事記由来の神様は未だはっきりと解ってはいませんが、 イザナミ神は万物を生み出す創造神であり、また闘いの神でもあります。黄泉比良坂の話は彼女の一部がクローズアップされただけですからね。しかし、イザナミ神だとすると伊勢神宮ではなく出雲大社由来となるのだろうか...?」 「ふむう、なるほど...」 ・・・ぷっ!俺と神主さんは同時に噴出した。 「あはははははは!」 「わはははははっは!」 「いやー。神主さんも好きですねぇ。」 「大学では結構オカルト博士で有名だったんですよ~」 「なかなか凝った背景で説得力有りますよー!」 「あははははは!」 ひとしきり笑った後、神主さんは突然まじめな顔に戻り「でも、この神社の奉神の話は本当です。ですから、信じなくても結構ですが、昨夜の夢に沿って行動するとよいと思います。」 「はい、解ってます。それでは、オオカミ様のお宮の保守を行ないます。」 「よろしくお願いします。」 俺は途中でアクセサリー屋の本店により、骨董の展示場を見せてもらった。 そこにはいわく有りげな装飾品や刀剣、鎧兜が並んでいた。 しばらく眺めるうちに、ふと夢の事を思い出した。・・・耳飾、か。 イヤリングなんてダメだろうなあ...等と考えていると装飾品の中で鈍く光った物が目に付いた。 そちらを見ると、鈍い銀色の勾玉が二つ。 手に取ると意外に軽く、純銀では有るがどう造った物か中は空洞で有るようだ。 しかし、繋ぎ合わせた跡も無い。 爪の部分に穴も開いており、其処にワンタッチの銀リングを通すと洒落た耳飾となった。 結構な高値だったが縁起物を値切りたくは無かったので言い値のまま買い求め、俺はオオカミ様の社に向かった。
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