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足元を見ると、多分俺の背中に当たってであろう小石が落ちている。
何気なくそれを拾い上げてみると、それは小石ではなく蛇の頭だった。
「うおっ!」驚いた俺はそれを取り落とし、もう一度周りをよく見回してみた。
しかしやはり誰も居ない。
急に不安に駆られ、俺は社に向かって駆け出した。
社の戸を開けた瞬間、何かが猛スピードで俺の脇をすり抜けた。
俺はとっさにそれを捕まえようと振り向き様に掌で掴もうとした。
長い毛を掴んだ感触が有ったが、スルリとすり抜けて捕まえ損なってしまった。
しかし、俺の目にははっきりとした姿は全く見えなかった。
ふと掌を見て見ると、其処には金色の長い毛が数本握られていた。
社の中で、弟弟子は昏倒していた。
急いで抱き起こし、喝を入れたが意識は戻らない。
俺は彼を抱き抱え、急いで神主さんの居る本社へ車を走らせた。
神主さんに事情を話し、神主さんに救急車を呼んでもらう様お願いし、電話を借りて親方に連絡を入れた。
親方は直ぐにこちらへ向かうと答え、電話を切った。
まもなく救急車と親方がほぼ同時に着き、救急車には親方と一緒に来た別の弟子が同乗して行った。
俺は親方に今日有ったことを報告し、親方は青い顔をして振るえている神主さんを緩やかに問い詰めた。
神主さんが語り始めたのは、夢の話。
半年ほど前から神主さんの夢枕に時々大きな狐が現れ、社を放ったらかしている事を詰り始めたという。
しかし、神主さんは忙しいのに紛れ更に放置していた所、一ヶ月ほど前に恐ろしい形相の狐が現れもう待てないから祟ってやると言い放ち、それからは夢に出てこなくなってしまった。
その後直ぐに神主さんの娘さんが交通事故で大怪我をし、未だ入院中である事。
奥さんが階段から落ち、やはり大怪我をしてしまった事。
そして飼い犬が何者かに攫われ、翌朝耳と鼻がポストに入っていた事。
その辺りで神主さんは祟りが始まったと感じ、ウチに修繕を依頼してきたそうだ。
親方は話を聞き終えると目を瞑って考えていたが、目を開くと俺に向かって「○○、この仕事は断った方が良いかもしれんな」と言ってきた。
神主さんは驚いて「そ、そんな!一度受けたのを今更!」と叫んだが
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