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宮大工の話②
俺が宮大工見習いを卒業し、弟子頭になった頃の話。
オオカミ様のお堂の修繕から三年ほど経ち、俺もようやく一人前の宮大工として仕事を任されるようになっていた。
ある日、隣の市の山すそにある神社の神主さんが現れ、その神社で管理している山奥の社の修繕を頼みたいと依頼してきた。
俺は親方からその仕事を任され、弟弟子を連れて下見に出掛けた。
その社も相当山奥にあり、依頼してきた神社の裏山に三十分ほど入り込んだ場所にあった。
その神社は稲荷神社で、もちろんお狐様を奉っている。
社の状態は相当酷く、また神主さんもこの一年掃除にも来れなかったと言うだけ有り
汚れ方も大層なもので、最初の掃除だけで丸一日掛かってしまった。
それから一週間ほど修繕の計画を立て、図面を引き、神主さんと打ち合わせをして、
4トントラックに道具と材料を積み込み弟弟子一人と作業に出掛けた。
何時も通りに着工の儀式をしていると、先ほどまで晴れていた空が掻き曇り、大粒の雨が振り出した。
神主さんと俺たちは急いで社の中に逃げ込み、一次祈祷は中断した。
その時、弟弟子が「社に入る前に大きな尻尾の狐を見た」と話し、俺は「修繕しするのを待っていたお狐様が様子見に来たのだろう」と半分冗談で返した。
しかし、神主さんはなぜか青い顔をしてガタガタと震えており、不振に思った俺が「どうかなさいましたか?」と聞くと「い、いやなんでもない。ちょっと気分が悪いだけだ」と答えた。
そして、雨が止んだあと、神主さんは大急ぎで祈祷を済まし逃げるように帰ってしまった。
俺と弟弟子は、そのまま作業に掛かった。
一週間ほどは平穏に作業が進み、痛んだ箇所を粗方剥ぎ終わり、思ったより酷く痛んでいるので俺は修繕の為の計画を再構築する為に一日現場に行かず、弟弟子を一人で片付けにやらせた。
ところが、5時には事務所に帰るように言っておいた弟弟子が帰ってこない。
今の様に携帯電話が普及してる頃ではないので連絡も取りようが無く、6時まで待って帰ってこないので仕方なく俺も社まで行くことにした。
薄暗くなる頃に社に着くと、ヤツの軽トラが未だ停まっている。
俺は階段を上り、いつも通りお狐様に一礼をしてから鳥居を潜り歩き出した。
と、その時俺の背中にに何かが「コツン」とぶつかった。
「?」俺が振り向くと、別に何も居ない。
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