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ビルに囲まれた裏道に青年は居た。
「しつこいな・・・」
苛立つ青年からそう遠くない所から複数の足音が追い立てるかのように迫って来る。
それらを倒せばしばらくは安全だろう、
だがそのあとに待っているのは拡散していた複数の部隊による集中捜索だけだ。
それは最も避けなければならない事だ。
向こうには繁華街の光が見えていた。
そこには人が雑多していて隠れられるかもしれないがその分嗅ぎ回っている部隊も多いだろう。
そして青年は壁と壁の間が狭いことを利用してビルの屋上へと登りはじめた。
ここに来るまでに3キロはぶっ続けで走ってた事に比べれば決して苦ではなかった。
屋上から見えた景色には軍用に見える車が点々としていた。
そして緊張感から解放された為に思わず出たため息と共に座り込む。
こうして逃げているきっかけは大企業「香月グループ」が裏で密かに行っていた様々な開発、
その中にあった兵士開発課で大量の試験体による逃走劇だった。
青年もその中の一人、198号と呼ばれていた。
「これからどうすれば良いんだよ」
青年は夜景を眺めながら途方に暮れていた。
その時屋上に何かを擦るような音が響く。
(まさか気がつかれていたのか!?)
焦り、音の聞こえた方を振り返るとドアを開けて呆然としている少女が居た。だからと安心できるわけではなかった。
今青年が着ているのは課で試験服と呼ばれている高性能だが全身黒タイツの様な不審者と思われてもおかしくない物だったのだ。
ここで警察にでも通報されたら足跡が付く。
逃げたら尚更、
今口封じに襲っても時間の問題だった。
緊張感から頬を汗が伝う。そして彼女は口を開いた。
「君面白いね」
「へ?」意味が分からなかった。
悲鳴を上げて逃げるとばかり思っていた青年はマヌケな声を出してしまった。
そしてぽかんと彼女を見たまま固まってしまう。
「何?もしかしてこれから変なことでもするのもりだったの?」
クスクスと小さく笑いながら聞いてきた。
(やっぱりどう考えても普通の反応じゃないよな)
だから疑問をそのままぶつける様にして聞く。
「何で怖がったりしないんだよ?」
それに彼女は間髪を入れずに言った。
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