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「うぇ…ぐずっ…」
「いい加減泣き止めよ…。ハタから見たら俺が泣かしたみたいに見えるじゃんか」
「ごめん…。でも止まらなくて…」
演劇も終わり、体育館から出た俺たちは行くあてもなくキャンパス内を歩き回るのだが、隣を歩くこの娘が一向に泣き止まない。
どうやらさっきの劇がドツボだったようだ。
…俺もああいうベタな展開は好きだけども。
「もう時間じゃね?」
「あー、本当だ!? 早く行かねぇと始まっちまう!」
「場所あるかなー。大体の場所はもう取られてるかも…」
なんだかキャンパス内が妙に騒がしい。
周りの空気からもその忙(せわ)しさを感じとることができる。
「こんな時間に何かあったっけ…?」
今の時刻と今日予定される出来事と照らし合わせてみる。
「……あ!」
思い出した。
この時間からお笑いライブが始まるんじゃねぇか!
「スズ急ぐぞ!」
「ふぇ…? ちょ、ちょっと待ってってば」
スズの手を引いてその会場に向かって走り出した。
野外設置された会場に着いたけど、そこはもう見渡す限り人で溢れていた。
そりゃあ普段テレビで観てる人が目の前に現れるんだから気になるのが普通。
俺のミーハー精神も疼くぜぇ!
「…悠二、見える?」
「なんとか、微かに…」
しかし、人が多くてよく見えなかった。
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