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「すごい上手だよね。これ本当にあたしたちと同世代の人たちが描いたのかな?」
「まぁ、特にお前は絵が下手だからなー」
「悠二に言われたくないよ!」
俺とスズは大学祭を十二分に堪能しようとキャンパス内を歩き回った。
明日もあるから今日そんなに回る必要はないんだけど、その考えは今は無い。
だってスズと回る大学祭は今、なんだから……
「…悠二。悠二?」
「は? え、なに?」
「んもー。耳が遠くなったの、悠爺?」
考えをしていたからスズの声に気づかなかった。
「んで何?」
缶に口をつけ、中のジュースを喉に流しながら尋ねるとスズは真っ直ぐに腕を伸ばして指を指した。
「ほら、あれ! あそこなんて楽しそうじゃない?」
スズの人差し指の延長線上を目で追っていくと、そこには演劇部の文字が。
「あと10分くらいで演劇します――だって! 見に行こうよ」
「へぇ、演劇部か。存在は知ってたけど、こうして活動してるのは初めて知ったな」
なんか楽しそうなので二人で指定された場所へと足を向ける。
「今日は私たち演劇に足を運んでいただきありがとうございます。それでは“本当の想い”ご鑑賞下さい」
体育館を利用したその舞台は俺たちがついたところで幕を上げようとしていた。
俺たちの他にも客が複数来ていて皆、パイプイスに腰かけている。
俺もスズもその客の一部になりイスに腰を下ろした。
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