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「翔太。本当は好きなんでしょ? 先輩のこと。私知ってるんだから」
「杉原…」
始まったその演劇はジャンルで言えば恋愛もの。
主人公は翔太という高校生2年生。
ヒロインは同い年の杉原という女の子で翔太とは幼なじみのようだ。
杉原は翔太のことが好きで、その翔太は先輩のことが好きという三角関係という話。
よくあるベタの話と言えばそうだが、なんか見いってしまう。
別にキャストが格別演技が上手い訳じゃない。
けど、なんだか今の自分の状況と重なって見えて――
ってあれ?
今の俺って三角関係にあるの?
んんんん?
俺が1人、こんな考え事をしてる間にも劇は続いていく。
「杉原…気づいたよ俺。俺、本当はお前のこと…好きだ」
「翔太…。私すごく嬉しい。これからも、よろしくね」
結局翔太は幼なじみの杉原の気持ちに気づき、その気持ちに応え、物語はハッピーエンドで終わった。
そしてこの舞台は俺たち観客の拍手をもって幕を閉じた。
「本日はありがとうございました。明日も公演を行いますので、よろしかったら明日もお願いします」
90分弱か…。
司会者の言葉を聞きながら、携帯で今の時間を確認する。
講義1コマ分と同じ時間の長さだったけどそんな自覚はなかった。
始まってから時間の流れが早く感じられて全然苦とさえ思わなかったし。
「ゆ…悠二ぃ。いい話だったね…」
「あぁ。…ってスズ泣いてんのか!?」
「だってぇ…だってぇ…。杉原さん良かったねぇ…」
チラリと横に首を向けるとスズが涙をぼたぼたと床に溢している光景が目に映った。
まぁ、いい話だったけどさ…。
ちょっと感情移入し過ぎじゃないですか?
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