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「もう、こんな時間だね」
「そうだな…」
気がつけば西の空はもう赤くから薄暗く、夜へと変化していようとしていた。
色々見て回った足はこれ以上歩きたくないとパンパンに膨らみ、駄々をこねる。
「長いようで短かったね…」
「あぁ、本当に。もう今日も終わりなんだな」
周りの店は今日は店じまいだと片付けし始める。
その光景を見てると寂しさと同時に本当に今日は終わるんだな、と実感する。
「そろそろ帰ろうか?」
「うん」
そう頷くスズと横並びになって自宅を目指す。
帰る途中、2人の間に会話はあまりなかった。
今日の出来事の余韻に浸るかのように。
いや、口数が少ないのは疲れてるせいなのかもしれない。
「…………」
「スズ、今日は疲れた?」
別に沈黙は苦じゃないんだが、普段口数が多いスズだけに喋らないことが違和感だと感じ、声をかけた。
「…うん?」
「いや、スズがあんまり喋んないからさ」
「あぁ…うん」
歯切れの悪い言葉で返事を返すスズは一度視線を地面に向けると、その後ゆっくりと俺の顔を見た。
「帰り道、一緒だね」
そう笑顔で言うスズに対し、俺も笑顔で返事を返す。
帰り道、一緒。
この言葉が心を揺らすように俺の中で何度も何度も響いた。
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