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「それで今日は楽しかった?」
食べ終えた後の皿を流し台に持っていき、水に浸す俺の背中にそんな言葉を投げ掛けてきた。
それは別に、
「わたしは今日留守番だったのに、2人は楽しく祭りを堪能したんでしょ?」
というひがみは含まれてはおらず、単にどうだったか尋ねてる。
「あぁ、うん。楽しかったよ。驚いたのがさぁ…」
「あぁー! ちょっと待って。ネタバレなし! 聞いちゃったら明日の楽しみ無くなっちゃうじゃん!」
俺がその内容について語ろうとした瞬間、千波が口を開き俺の言葉を遮る。
そりゃそっか。
千波にとって初めての大学祭だもんな。
地元なのに今まで行ったことなかったのか、っていう疑問は浮かんだけど、そこは察して何も聞かないことにした。
「明日かぁー…。早く明日になんないかな? ね、ゆーくん明日はわたしとみんなで行こうね?」
明日が楽しみで仕方ないといった感じで、その溢れる感情が笑顔になって見てとれる。
「うん、そうだな……ってみんなで!?」
「うん、みんなで」
屈託の笑みに押されてそれ以上何も言えなかった。
別にみんなとでもいいけどさ。
みんなで楽しく学祭回るのもいいけどさー…。
なんて言うか、なんて言うか…
もっと、
「鈴ちゃんと2人きりなんてずるいよ!」
とか嫉妬してくれてもいいんじゃないの?
べ、別に千波と2人きりで回りたいとかそんなんじゃなくて!
あー……。
俺何考えてんだろ。
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