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「ゆーちゃん、お待たせー」
「うぁっ! 彩先輩、びっくりしましたよ」
急に感じる頬を刺す冷たさに驚き、それに応じて肩があがった。
「ごめんごめん。はい、これゆーちゃんの分」
謝りながらも笑う彩先輩は1つの紙コップを手渡してくれた。
その紙コップにはちょっと底のある蓋がついていて、その蓋に唐揚げが入っている。
「ありがとうございます。いただきます!」
ちょうど小腹も空いていたし、喉も渇いていたので有り難く頂くことにした。
「ふふふ…」
俺が唐揚げを食べたり、ストローで中のメロンソーダを飲んでいる姿を見て彩先輩が笑っている。
彩先輩は大切な人を見るかのような優しい瞳をしていた。
「俺の顔に何かついてます?」
その視線が異様に気になったので尋ねてみると、その優しい瞳そのままで答えてくれる。
「ゆーちゃん、これすごい好きだったもんね。一緒にお祭り来るといつも絶対これ買ってたもんね」
「……? 俺、彩先輩とこうして祭りで一緒なの初めてですけど」
「あ、あははは。ごめんね、一緒に祭り来れたのが嬉しくて紛らわしいこと言っちゃった」
「はぁ…」
そう言う彩先輩の口元は笑っているが目は笑っていなかった。
先ほどの優しい瞳は何だか悲しそうに見える。
瞳に映る先に誰かを見ているかのような――
って考え過ぎか。
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