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「それより、本当に良かったのか?」
「え? 何が?」
満足した千波は着ていた制服をハンガーにかけ、フック型の釘にかけると不思議そうな顔で俺を見つめた。
「いや、その、学校のこととか、住む場所のこととか」
3月の頭ほど、千波の制服や教科書などを取りに『たのし荘』に足を運んだ。
その時千波が母親に学校に行くことを伝えると、母親は隣町にいる自分の両親、つまり千波の祖父母にあたる人を紹介された。
そしてその人たちが千波の今後の学費を払ってくれるらしい。
本当はその祖父母の人に一緒に住まないかと誘われたらしいけれど、俺と一緒に住むと我が儘を言って、今こうして俺のところにいる。
けど、俺はそれが本当に良いことなのかずっと気にかかってしょうがなかった。
千波にそう問いかけると千波は怒った口調で俺に言った。
「わたしはゆーくんとずっと一緒にいたいんだよ! それとも何? わたしは邪魔なの?」
「違うって! 俺はただお前のことが心配なだけで…」
あんまりにも千波が怒るので、言いたくなかったけど本心を言ってしまった。
「えへへへー、そうなんだぁ。もー、それならそうと早く言ってくれたら良かったのにぃー」
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