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どれくらい時間が経ったのだろう?
自分と同じ境遇の人間が、他に7人いることはわかる。
オレはとにかく、他の人間を探すことにした。
木箱からカッターナイフとマッチを取り出しポケットに納め、テントを出た。テントを持って行こうかとも考えたが、重く大きかったので諦めた。
水のあるところに誰かいるだろうと、小川を上流に向かって歩き始める。
しばらく歩くと、小川の川べりに石が重ねてあるのを見つけた。どう考えても自然にできたものではない。
オレは早くも期待に胸が膨らんできた。
「誰だおまえ!」急に背後から声が聞こえた。
ビックリして振り向くと、木の枝を杖がわりにした男が立っている。男の手には、二匹の魚がぶら下がっていた。
「すまん、今日目が覚めたらこの下流のテントにいたんだ。歩いてるとこの重なった石を見つけたんで誰かいるのかと思ったんだ」とオレは答えた。
「なんだそうかよ!早く言えよな!俺も気づいたらこんなとこにいたんだよ。腹が減ったから魚でも食おうかとしてたんだけどよぉ」ずいぶん馴れ馴れしい男だ。
「あんた名前なんていうんだ?俺は鈴木、鈴木義男っていうんだ。」なるほど、男は鈴木というらしい。
「オレは田中仁だ。今年で29才になる。」聞きたいことは山ほどあるが、焦ることはない、鈴木とはしばらく一緒にいるだろうと思った。
「それじゃ俺のほうが年下だな。俺は23才だからさ」鈴木は自分が年下とわかりながらも話し方を変えない。
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