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時は過ぎ、営業終了時刻を迎えた。
後片付けなど、全ての仕事を終えた俺は一服をしているところだ。
ちなみに早紀は学校が終わると喫茶神山の2階であずかってもらっている。
「もう直哉君がうちで働き始めて3年か……早いもんだ。」
椅子に座って黄昏れているとおじさんが話し掛けてきた。
「また昔話ですか?まったく…おじさんも好きですね。」
そう3年前……俺は初めて喫茶神山を訪れた。
親父が失踪して親戚の世話だけになるのが嫌だった俺はせめて金銭面だけではと思い、バイトをすることを決めた。
しかし、当時中学生だった俺を受け入れてくれる店は無かった。
それで、途方に暮れていた俺に声をかけてくれたのがおじさんだった。おじさんに事情を話すと嫌な顔一つすることなくすぐに俺を雇ってくれた。
「ほんとに感謝してもしきれませんですよ、おじさん。」
これは本当の気持ち。
他人よりも内側にいて暖かさを感じさせてくれる唯一の存在。
「いやいや、こっちこそ直哉君は仕事も早いし助かってるよ。それに直哉君のファンも結構いるんだよ。あとは…ほら静も奈津も変わってるだろ?直哉君がいると僕も精神的に助かるんだ。」
「そうですか……ありがとうございます。」
だからこれは本当の気持ち。
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