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――*――
「やりすぎた……」
佐加原家から3分程に位置する公園のブランコで、一人男が項垂れていた。
ベタなドラマのワンシーンを思わせる風景の中心にいるのは、先ほど家を飛び出した光。
蛍と喧嘩することはよくある。母に言わせればそれは「じゃれあって」いるらしいし、姉に言わせれば「いちゃついて」いるらしい。
ただ今回は、やりすぎた。チーズケーキごときでむきになって、アホらしいと思う。
けれども、あのケーキは姉が買ってきてくれたものだ。
『コンクールで優勝したら、奮発して買ってくる』
『なぁ、姉ちゃん。普通俺がお祝いにケーキ買うんじゃないの?』
コンクールで優勝した証に、姉が買ってきたケーキなのだ。
恐らく蛍はケーキではなくチョコレートあたりを貰っているはずだ。
姉が俺へのケーキだと蛍の前で言っていたわけでもないので、蛍はそれが少し特別なケーキだと思っていなかったのだろう。
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