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「……蛍光灯が割れちゃったって、お母さんに言ったら笑ってた。じゃあ取り替えないとねって。でもね」
残された一本が、今日は自分でなんとかするって言ったの。
詩音はそう告げると同時に立ち上がり、ひらひらと手を振って公園から出て行ってしまった。
そうしてすれ違いに息を切らしながら公園に飛び込んできたのは、残されたもう一本の灯。
「光……!」
ぜえぜえ言いながらよろよろと歩く蛍の姿に、光は呆れたように笑う。
「運動部のくせに、あんだけの距離で息切らせてどうするんだ」
「こ、これには深い訳が……」
どんな訳だよ、とツッコミを入れながら、光は蛍の方へ歩み寄った。
すると蛍は、手に持っている箱を突然光に押し付けた。
「ごめん! 俺、あのケーキが姉ちゃんがコンクールの時買ってきたのだって知らなくて……俺が姉ちゃんにもらったチョコ、光にあげるから!」
必死に頭を下げてくる蛍の額に手を当て、その頭を上げさせる。
そうして柔らかい笑みを浮かべると、くしゃっと蛍の頭を撫でた。
「俺、一人でこんなに食べられないよ。家帰って、一緒に食べよう」
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