俺、僕、私

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「……っ」 目が覚めた時には、既に時遅し。 君との約束の時間だった。 枕元に置いた携帯には、君からの着信履歴(しかもたくさん)とメールが一通。 内容は… 『今から行くよ』 今日は、お家デートにしようか。 ほら、チャイムが聞こえたから。 「酷いなぁ…」 「だから、ごめんってば~」 僕の前でへらへらと笑いながら、彼は手際良く朝ご飯を作る。 小気味良い音と、心地良い匂いが僕をまた眠りへと誘う。 「おい!!寝るなぁー!!」 彼の声が聞こえるけど、僕には聞こえない……フリをしていた。 カチャン、と綺麗に響く食器の音だけが耳の近くで聞こえる。 「ほれ」 「ぬー?ありがとー」 目の前には、ベーコンエッグとほかほかのご飯。 おまけに、ワカメの味噌汁までついていた。 「いただきます」 彼がにやにやと笑いながらこっちを見つめる。 「な…何……」 「寝癖可愛い~」 コイツは心底馬鹿だと思った。 そんな彼に愛されて、幸せだと感じた僕も馬鹿だと思った。 たまにはこうやって寝坊して、彼に朝ご飯を作らせよう、なんて。 「ねぇ」 「何ー?」 「……やっぱ何でもない…」 「何だよ」 彼は僕の顔を見てまたニヤつく。 こんな日がいつまでも続いて欲しいと思った。
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