第1章 ウタガイ、ゴカイ

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 生活指導部の先生に拘束された後。自分は引きずられるように、生活指導室へと無理矢理連れて来られた。  無理矢理というのは。無抵抗を決め込んでいたのだが拘束が解かれず、羽交い締めの状態のままで歩かされたからである。  解いても逃げやしないのに。とは思いつつも、逃亡防止なのだから仕方ないと割り切って諦めた。  部屋に入って椅子に押し付けられ、「座っておけ」と耳近くで脅された。真ん中に机があって周りに椅子が4つある部屋で、自分は指示通りに座った。  ドアの前に怒号の顔で立つ先生。自分を見る目は、風貌や態度が悪い生徒を見るものではなく、もはや犯罪者を見下す目つきだ。完全に疑われている。  話し出す事もなく沈黙。他の先生方が集まるのを待っているみたいだな。  部屋に連れられてから10分が経過した時。先生がもたれていたドアにが叩かれ、ノックの音が響いて、 「青谷先生、この子が……?」  教頭だったか学年主任かは忘れたが、偉い方の先生が入って来てそう尋ねた。自分を羽交い締めにして拘束したのは、青谷という名前の先生であったのか。  それから続々と狭い部屋に先生が入って来た。担任、副担任、生徒会担当の先生まで。計5人。  机を挟んだ向かい側に座る担任。の後ろに立つ青谷先生が、耳を塞ぎたくなるくらいの音量で自分に問う。
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