第1章 ウタガイ、ゴカイ

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 偽善の言葉を吐き、先生を納得させたかと希望を見てみたのだが。生徒指導室という名前を改め、生徒1人に対する尋問室からは出られなかった。  理由は聞くまでもなく明白で、まだまだ自分に対して根掘り葉掘り聞きたい事もあるし、殺人容疑者である自分を簡単には返したりしないだろう。  しかし、中に居て椅子に座るだけというのは辛いだけであり。外がどうなっているかも気になる。  担任に外の様子を聞くと。救急車が動いて織崎を病院に運び、生徒は即時下校として部活無し、部屋の外では校長が警察と対応しているのだと。  警察の事情聴取を覚悟したんだが、先生が代理で答えてくれるらしく、安心する一方で捏造(ねつぞう)されないかという不安がよぎった。  更なる質問なり決めつけなりを受け続けて幾十分、誰か先生が入ってきて担任に告げる。織崎が運ばれた病院に行って、親御さんに説明して欲しいと。  担任はこれを快諾し。去り際に「織崎から遺言は聞いたか?」と尋ねてきたが、自分は首を横に振って返答する。  自分の返答に難色を示しながら、この尋問室を去る担任。  遺書、遺言もない突発的な自殺。あるいは、生徒同士による殺人事件。さて、織崎の親御さんにはどちらで説明されるのか。
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