第1章 ウタガイ、ゴカイ

8/40
前へ
/53ページ
次へ
 ストレスを放り込まれ続けるゴミ箱状態から解放されたのは、日が傾いて夕方になった時になってからである。  夕方以上まで拘束する気は無かったようで。親に連絡を入れられ、明日から自宅謹慎を告げられて解放。  自分の処置は追って自宅に連絡するとか、そう言われた気がするが良く覚えていない。一刻も早く尋問室から出て行きたくて、話半分しか聞いてなかった。  本来ならば。親を呼び出して引き取ってもらうのが普通なのだろうが、両方とも会社の重役に就いている為に来られなかったのだろう。いや、来なかったんだな。  一人息子が学校で何起こそうが、会社を抜け出してまで来やしないのだ。帰ってから説教で済まし、「自分達に迷惑を掛ける事はするな」で終わらせるのが常。  迷惑を掛けないなら基本的に放任で自由で良いのだが、世話を掛けてはくれない冷たい親には違いなかった。  親に対する文句を心の中でぼやきつつ、自分のクラス1ー3へと入る。  さすがに。机の上に「人殺し」と書かれた落書きや、死送の花が活けられた花瓶が置いてあるとか、目に見えるイジメはまだされていなかった。  目に見えぬイジメも同様。机の中にある物もそのままで、隠されたり壊されたりもされていない。  でも、それは現段階の事であり。明日からはどうなるかなど分からない。自宅謹慎が解かれた後がどうなるかだ。  机の中身を全てカバンに移し替え、嫌な思い出しかない場所を自分は出て行った。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加