第1章 ウタガイ、ゴカイ

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 誰もいない校舎。と、形容したくなるくらいに静まり返っている。生徒は部活無しに下校しているし、教師は職員室に籠もっているからな。人影はどこにもない。  夕陽が差しているからとはいえ、こうまで静まっていると恐怖心が湧いてくるものだ。学校と病院は夜に入りたくない。墓や寺も同じくだ。  このまま真っ直ぐに家に帰り。いつもの説教を受けて今日を終わらし、自宅謹慎しながら処置を待てば良かったのだけど。  自分は足を玄関に向けず、灯りが点いている部屋を目指して進んで行く。  この、職員室という場所に。 「失礼致します」  入り口近くにカバンを置いてから、丁寧な挨拶をして入れば。  一斉に冷たい視線と、驚愕を浮かべた顔が自分に向いてきた。  無理もない。殺人容疑者の生徒が入って来れば、誰だってそうはなるだろう。  全員の先生方が動きを止めている中、自分は刺さる視線を気にせずに室内を見回した。ここに来た目的の人物は――――――いたいた。  机が4列に並べられた奥。その手前側に疲れたように座る担任へと近寄れば、担任の方から声を掛けられる。
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