プロローグ

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「一人立ち、ね……。難しい事を考えているんだな織崎は。感心するよ」 「確かに難しい問題だよね。でも、やらなきゃいけない事だし、逃げてなんかいられないからね」  ハブられているからこそ、一人で生きていく為の方法を考えているのか。そういう反抗期精神は自分にもあったな。  今はその精神など折られ、人は他人無しでは生きていけないと知っている。他人と連めていないからこそ、高校生活が楽しくないのだと自認している。  周りを阻害して一人で生きようと考えるのは意地だ。周りから嫌われているからこそ、意固地になって他人が不要と結論を出した。まだ子供の証な考え。  社会的には。自分の限界を悟り、手の平の大きさを知り、諦めて切り捨てて、立ち位置を把握するのが大人である。  他人を損得感情を用いて付き合ってこそ、頭が賢い生き方と言えよう。  で、周りへの反抗期真っ只中であり、それが正しいと錯覚しているであろう織崎は続けて、こう自分に問いた。 「柏壬君は、私の'ひとりだち'を止めたりしないの?」  意味が分からない。一人で生きるという立派な意地を持つ少女に、関わって労する事などするものか。  それに、一人で生きようとする事を止めて欲しいのか? 周りから構って欲しいだけの為に、あえて危険に身を晒すとは安い覚悟なんだな。  織崎の内心評価を下方修正してから、当たり障りのない返答を言ってやる。
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