プロローグ

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「止める理由なんてどこにあるんだ? むしろ、応援してやってもいいぞ」 「え、本当? 嬉しいな。誰かにそう言ってもらえると」  社交辞令で言った言葉に本当に嬉しそうだな。今まで、誰かに期待なんかされていたり、応援されていたりしなかったからか、織崎の笑んだ顔には無邪気さが混じっている。  いつも俯いていたりする織崎の、子供のように笑った顔など初めて見た。軽く笑む事は少々あっても、今の表情は珍しい。  いつもとは違う表情に面を喰らい、自分は顔を背けて青空を見上げれば。上機嫌な織崎は自分に言ってきた。 「ね、柏壬君。良かったら少しお話しても良いかな?」  少し遠慮がちにでも談笑の誘い。もう少し遠慮してくれて、自分としては放っておいて欲しかったのだが。  これを断る方が面倒くさくなりそうだ。お互いハブられ者同士、仲良くする事で更に周りの視線はきつくなりそうだが、コミュニティーは広めておくか。 「あぁ構わない。とは言っても、自分は何を話せば良いんだ? 自慢ではないけど、喋りには自信がないぞ」 「確かに自慢する事じゃないよね。むしろ、欠点なんじゃないかな」  冗談で言った自嘲を塩を塗られて返された。根が天然なのだからか、悪意なく言っているのが癪(しゃく)に触る。  そうやってこいつは嫌われていったのだなと察し、でも自分は対応は変えず。
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