プロローグ

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「へ~、そうなんだ。私てっきり、柏壬君も私と同じだと思ってたのにな」 「織崎は両親が嫌いなのか?」  意味もなく尋ね返す。いや、少し興味が出た内容だから尋ね返すと、 「うちの親って厳しくてね。愛情、なのかはよく分からないけど、厳しいから嫌いなんだ。私は。  嫌いと言うより、多分苦手なのかな」  厳しいから嫌いになる、苦手意識を持つ。織崎も普通の女の子なんだな。……当たり前であるか。  そこから1人語りのように話される織崎の過去話。習い事や塾、家庭教師など、本当に勉学に熱を注いでいたらしい。  でも、期待に応えられない不甲斐なさを織崎は自覚していて。だから頑張ろうとして逆効果になって、出来ない事を無理矢理やる毎日なのだと。  昼休みが終わる間際まで、自分はずっと屋上の隅で話を聞いて、時折適当な相づちを返していた。  他愛のない話と言えば他愛なく、苦痛と言えば苦痛だった会話。やはり自分は、人付き合いが嫌いなんだと再確認する。  時間も頃合いだ。自分は立ち上がり、この苦痛から逃げた先にあった苦痛から逃げる為、教室へ戻ろうとしたら。  屋上に備えてある、落下防止を防ぐ為のフェンスを織崎が乗り越えていて。慌てて自分は咎めた。 「おい、そこは危ないから戻――――」  自分の言葉を遮ったのは、彼女の笑み。それは悲しさを孕んでいた顔で。
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