プロローグ

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 だから先約がいたと彼女は言った。自殺する場所、人目が無い場所を選んだのに、同じく人目を避けようとした自分がいたもんだからな。面を喰らったのだろう。 「柏壬君は、私の'独り断ち'を止めたりしないの?」  なんて織崎は言っていた。言葉の裏の意味を分かっていたなら止めていたさ、応援するだなんて言わなくな。  止められなかった事の罪悪感と、でも仕方なかったと割り切る言い訳がせめぎ合い、胸くそ悪い気分になった。自殺を目の当たりにしているから、なお一層に。  青空を仰ぎ見るが、晴れ晴れとしているのに心は晴れず曇天。いっその事、雨が降ってくれた方がマシだ。  精神の限界で屋上に腰を下ろし、まとまらない頭を整理しようとしたら。  強く扉が開き、怒号した顔の生活指導部の先生が現れて。自分の体を掴み、乱暴を用いて取り押さえられた。  現行犯逮捕。事実は違うが、この名前を知らない先生の頭の中は、そうであったに違いないハズだ。
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