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翌朝。 俺の体を気遣う看護婦さん。 ありがとう。 だけど、俺に優しくしないでくれ。 こんな殺人鬼に。 皆を殺したこの俺に優しくしないでくれ。 また発作かな。 落ち着いてくれ。 頼むから。 俺は、もう壊れたくないから。 「圭ちゃん」 魅音、か。 魅音の声。 「何やってんのさ?圭ちゃんらしくないね。もっと元気出しなよ」 魅音。 ごめんな。 痛かったよな。 「魅音…。俺…」 「大丈夫だよ。私達は、圭ちゃんのこと信じてるから」 魅音。 「前原さん…?」 看護婦さんが俺を呼ぶ。 だけど俺は、その声に気づかない。 「圭ちゃんっ!ほらっ!こっちだよ!」 待ってくれよ。 魅音。 「待って…」 「圭一クン…」 この声は、レナか。 「圭一クンは…レナが守ってあげる…。約束だから…」 レナに足を掴まれる。 動けない。 ヤバい。 また発作が起こる。 嫌だ。 「や、やめろッッ!!!!」 「ま、前原さんッ!!落ち着いて下さいッ!!」 看護婦さん。 レナじゃない。 また幻覚。 「ごめんなさい…」 俺は、看護婦さんに謝る。 「前原さん…。何かありましたら…相談に乗りますからね…。一人で抱え込まないで…。話して下さいね…?」 いつも優しい看護婦さん。 そう言えば、俺は、その看護婦さんの名前を知らない。
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