妖精

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     …………。  ………………。  ……………………。  柔らかな蝋燭の火が、木で造られた薄汚い小屋を、薄汚くボンヤリ照らしている。  小屋の中は適当に物が散らばっている。  木は廃れていて、所々が煤を散りばめたように黒くなっていた。  物置小屋、つまりは倉庫だからだろう。  そんな物置小屋を照らす蝋燭の火は、主に小屋の中央を照らしていた。  小屋の中央には、白い布が被せられた人ぐらいの何かと、その布の前の机に突っ伏した男性がいる。  男性は規則正しい穏やかな呼吸をして目を閉じている。寝ているのだろう。 「……こんな夜遅くまでご苦労様ね」  音が、空間に響いた。いや、音ではないのだろう。  空間に響いたという音はその実、空間を揺らしてすらなく、揺らしてたのは意識を司る脳なのだから。  ようは、テレパシーだとか、そういった類の言語通達能力だろう。 「人間は暇なのさ。僕らみたいに忙しくない」
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