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「兄さん、大変だ! 桃姫が拐われた!」
配管工を営む兄、真理男の元に息を切らせながら弟の涙児がやってきました。
「弟よ、それは本当か?」
「うん。また大亀の仕業だよ」
「そうか……!」
真理男は手に持っていたレンチを握力で握り潰してしまいました。
「すまん。弟よ。我は行かなくてはいけない。田中さん家を任せてもいいか?」
「もちろんだよ、兄さん!」
「すまんな」
そう言って真理男はメロスの如く疾っていきました。
(僕は影で良いから、兄さんは皆を照らす太陽になってくれ)
涙児は流れ落ちる涙を拭こうともせず、握り潰されたレンチを握ってました。
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