2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「兄さん、大変だ! 桃姫が拐われた!」 配管工を営む兄、真理男の元に息を切らせながら弟の涙児がやってきました。 「弟よ、それは本当か?」 「うん。また大亀の仕業だよ」 「そうか……!」 真理男は手に持っていたレンチを握力で握り潰してしまいました。 「すまん。弟よ。我は行かなくてはいけない。田中さん家を任せてもいいか?」 「もちろんだよ、兄さん!」 「すまんな」 そう言って真理男はメロスの如く疾っていきました。 (僕は影で良いから、兄さんは皆を照らす太陽になってくれ) 涙児は流れ落ちる涙を拭こうともせず、握り潰されたレンチを握ってました。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!