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お茶菓子を持って部屋に戻ると、さっきまであった甘いムードは姿を消していた。
それからはみっちり勉強! とにかく勉強!! ひたすら勉強!!!
途中、頭をガシッと掴まれるハプニングも起きたけど……。
俺がひたすら問題を解き、つっかえたら皐に教えてもらう……という具合で。
もちろん、教えてもらうのは答えじゃなくて解き方。
疑っていた頭の良さも解消された。
教え方が凄く上手いんだ。人は見かけによらず、か。
そして今は夕飯なんだけど……
俺と皐はリビングに来た瞬間、自分の目を疑った。
唐揚げにスパゲティ、ミニハンバーグにポトフ。
全部俺の好きな料理。味覚がお子ちゃま? そんなの自覚してる。
俺は、自分の大好物がたくさん並べてあって嬉しい……けど、
なに!? なんなの!?
この品数! 量!
隣に居る皐も少し引き気味。
「棗! お母さん頑張ったわよ! ほらほらっ! 檜嶋さん、ごめんなさいね? どんなのが好みかわからないから……棗が好きなのにしちゃったわ」
「だぁっ! う、うるさいっ! それよりなんだよこの量!? 3人分じゃないだろこれ! 軽く倍はあるぞ! 6人分だ! 6・人・分!!」
「クッ……ッ」
隣に居る皐は必死に笑いを耐えている。
多分皐も、俺の味覚のことで笑っているんだと思う。
だってほら、俺と料理を見比べているから。
「皐、なーに笑ってんだよ」
ツンツンと皐のお腹を指でつつく。
「ちょ、やめ……フッ。ハハッ、やめろ。なつ、め」
皐はまだ笑いを必死に耐えようとしている。
そんな俺たちのやり取りを見て、母さんは信じられない言葉を言ったんだ!
「ずいぶん仲良しなのね? なら、檜嶋さんの布団は棗の部屋でいいかしら」
「「え?」」
「……母さん? 言葉は選ぼうぜ? それじゃ、皐が家に泊まるみたいな言い方だけど?」
「泊まるわよ? 薺と電話で話し合ったんだけどね、ご飯食べてからも勉強するんでしょう? 明日もあるし……。だったら、連日のときだけ泊まってもらおうか、ってね!」
『ってね!』じゃねぇよ! 可愛く言ってみたって無駄だよ! だって全然可愛くねぇもん!
沸々と怒りを溜めていく俺をよそに、母さんは皐に視線を移す。
「檜嶋さんも、いいわよね?」
「あ、え、えぇ。一ノ瀬さんがよろしいのなら……」
そこは拒否しろよ!
「じゃ、ご飯食べましょっ」
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