2  棗Side

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俺がずっと目線を合わせずに黙っていると、皐が口を開く。 「肯定……だな?」 「俺はなにも言ってないだろっ!?」 「わかりやすいんだよ、棗は」 皐の顔がどんどん近付いて来る。 キス……される? ギュッと目を閉じるが、来ると予想した柔らかいものはいつまで経っても訪れることはない。 疑問に思い、そっと目を開けると、鼻先が触れる距離に皐の顔はあった。 上昇する体温。 加速する鼓動。 「目、開けとけよ」 「へ? ……ぅわっ!」 それからは皐から一方的に与えられるキスの雨。 額、瞼、頬、鼻、唇。 1つ1つを味わうようなキス。 しかし、触れるだけのキス。 何度も何度も、角度を変えながら……。 「皐……もういいだろ? いい加減止め……」 「なに言ってんだよ、馬鹿。まだ23時。夜はこれからだろ?」 艶やかな笑みを浮かべると同時に唇にキスをされる。 今までと違うのは、恐ろしく時間が長いということ。 息が苦しくなり、鼻で呼吸をしようとするが、皐の指で鼻を摘まれ呼吸をする術を奪われる。 「ん……んんん!」 息出来ねぇよ! こ、殺される……!? 「……はっ」 口を開け、酸素を求める。 しかし、口内に入って来たのは酸素ではなく、皐の舌。 皐の舌が入ってくると同時に、鼻を解放される。呼吸が出来るようになったというのに、俺はそれどころじゃなくて。 「……!?」 絡まってくる舌に、俺はどうすることもできない。 されるがまま。俺が唯一することができるのは、早く終われとただひたすら願うだけ。 初めての深いキスは、脳みそが溶けていくような、後頭部がじわりと熱くなるような変な感じ。なんにも考えられなくなる。 体がふわふわして、力が抜ける。 なんか……きもちい……? 皐はそんな俺を見て、キスを続けながら俺の胸に手をあて、撫でるように優しく触る。 ビクッと体は震えるも、力の入らない俺は皐に抗うことが出来ない。 男の体なんか触っても楽しくないだろうに……。 これが、ぼやけた頭で最後に考えられた言葉。  
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