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「んぅ……はせが…………長谷川さん……皐? あれ、は、はせ…………………………あぁっっ!?」
ガバッと勢いよく起き上がると、俺を見て顔を青くする。
「おいおい、俺は化け物かよ?」
なるべく強く言ってみる。動揺を悟られないように。
動揺って、なんだ?
何故、こんなに声が震える?
こいつをからかうつもりなんてなかった。
だいたい、一ノ瀬さんにバレたらどうするつもりだった?
「き、聞いた……?」
「はせがわさん?」
俺がそう言うと、棗の顔は青から赤に一瞬で変わる。
俺の中で黒い感情が渦を巻く。
黒くて、深い。
イライラする。何故?
ムシャクシャする。何故?
なにかを壊したくなる衝動。
思い切り叫びたくなる衝動。
なにが俺にそうさせる?
なにが……誰が……
目の前に居る、コイツか、コイツの言う、『はせがわ』か。
どちらでもいい……。
「あ、のさ……皐。聞かなかったことに、してくんねぇかな?」
恥ずかしそうに、でも幸せそうに……顔を綻ばせる。
ドクン
心臓が一際大きく鼓動を刻み、心がざわついていく。
俺がコイツにさせることが出来なかった表情を……はせがわが今、させている。
黒い渦。
俺の心を支配する。
俺はコイツをどうしたい?
今まで味わったことのない感情。普段ならば、考えたくないことは、考えない。今回もそうすればいいはずなのに。
考えなければいけない気がする。この気持ちがなんなのかを、ハッキリさせなければいけない気がする。
「皐……顔色おかしいぞ……大丈夫?」
俺より温かい手。
目の前を過ぎ、額に当てられる。
ッ!!
棗の手を思い切り掴む。棗の肩は少し上がり、ビックリしたような顔で俺を見る。
「悪い。心配するなら、水1杯貰えるか? それと……俺に触るな」
「え?」
馬鹿野郎。はせがわが好きな癖に。なんて顔をしやがる。
「布団、借りる」
「…………うん」
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