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階段を降りる音を確認すると、俺は大きなため息をつく。
ちゃんと確認しないで色々すると、風呂場の二の舞になるからな。
さぁ、どうするか。
俺は、俺の気持ちは……
俺は棗をどう思ってる?
コロコロ変わる表情が面白くて、反応が新鮮で、腐った思考回路のくせに純粋で……
堪らなく、可愛い。
ぁああぁぁあ!!! 馬鹿か! 俺は! 可愛い!! そういえば昼間も言ったなぁ!? 気色悪い!!
「皐。持ってきたよ」
そう言いながら部屋に入って来た棗の手には、1杯の水といくつかの錠剤。
「どこが痛いのかわかんないから……適当に薬持ってきた。これが頭、胃、お腹、風邪薬に、便秘薬」
便秘って……お前は俺が便秘に悩んでると思ったのか?
でも……心配してるんだよな? 今だけ、今だけは俺だけを考えてくれてる……。
あぁ、俺はまたなんて女々しいことを。
「まじ、なんなんだよ……」
なにも考えずに呟いた台詞。
水を貰おうと棗を見上げると、そこには目に涙を溜めながら俺を見下す棗が居た。
「なつ……」
「な、なんなんだよはこっちの台詞だ。皐こそなんだよ。さっきまで無茶苦茶触ってきたくせに、いきなり触るなとか言いやがって。ふざけんな」
棗はそう言うと涙を流す。それを手早く拭うと、鼻をすすった。
違う、泣かせたいんじゃないんだ。
こんな顔をさせたいわけじゃないんだよ。
棗には……棗には笑っていて欲しいんだ。
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