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「棗」
俺が立ち上がると棗の瞳が揺れる。
ギュッと抱きしめると、棗が俺の胸の中で呟く。
「なんなんだよ……」
わからない、自分でも。
でも、きっとこれは、この気持ちは………………あぁ、そうか。簡単なことだった。
俺はきっと、初めてこいつを見たときから
「棗、なんで俺が『恋愛』って言ったのか、答えが出た気がする」
「な、なんて?」
「お前がはせがわを好きなように…………俺も、お前が好きだからだ」
「え?」
「遊びじゃない。時間なんて関係ない。俺は、棗が好きなんだよ」
手中の棗を見ると、やはり顔は赤くて……
「ぁ、うぅ…………お、おれ、は、長谷川さんが……」
「だから、わかってるって。別にどうにかしようなんて……思って……ない……?」
「な、なんでそこあやふやなんだよ」
しょうがないだろ? 俺だってさっき自覚したんだから。
棗を自由にしてやり、頭をぐりぐりと撫でてやる。
「じゃ、俺は帰るわ」
水を貰ったせいか、思いを伝えたせいか、背筋が伸びたように、息がスッと吸えたようにスッキリしていた。
「え? 帰るの?」
「はぁ?」
馬鹿か、こいつは。
あやふやだったの忘れたのかよ? 昼間だって、さっきだって、あんなことされてんだぞ? もっと警戒心を持てよ。
「俺は棗のこと好きなんだぞ?」
「そっ! ……んなこと何回も言わなくたってわかってるよ……」
「わかってたのか。じゃあ、24時を過ぎた時点で一緒に居るのがまずいのはわかるな?」
棗は眉を寄せ、首を傾ける。
え? ここ? まじで腐男子かよ? なんでここでつっかえるわけ?
「棗にとってはなんともないけど、俺はヤバいのよ。理性とかそういう意味で」
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