3  皐Side

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それから俺は延々と田所先生とやらの話を聞かされ、何故か朝昼共有のご飯を買いに行かされ、散々こき使われたあげく棗のことでからかい抜かれた。 棗の過去の恋愛話を聞かされたときには本気で薺をこの世から抹消しようと思ったが、それと同時に棗への想いを強く再確認することが出来た。 俺はいつのまにか、棗の過去に嫉妬出来る程、棗のことを好きになっていたのか、と。 報われることのない思い……報われないからこそ、もう少しだけ好きでいてもバチは当たらないよな? 「お邪魔しましたーっと。じゃあな、皐。またなんかあったら呼べよ?」 「ん、ありがとな。その……色々と」 「ばーか、礼なんていらねぇよ。この程度のことでいちいち礼言わなきゃいけないんなら、俺は何回皐に礼言わなきゃいけないんだよ。じゃあなっ」 「おぅ」 薺は凄く良い奴だ。男からも女も愛される良い奴。 でもなんで、棗のこととなるとあんなに口煩くするのだろうか? 棗の話は薺から聞いていたし、薺が棗に電話でどやしているのを遠くで聞いたこともある。 あの変わり様はなんだ? 演じてるとしか思えない……。 「あ、やばいやばい」 こんなにゆっくりしてちゃいけない。遅れてしまうじゃないか。 携帯で時間を確認すると、俺は部屋の隅に置いてある段ボールから衣服を引っ張り出し、急いで着替えた。 あぁ、憂鬱だ……。 週5日か、俺が耐えられなくなりそうだ…………色んな意味で。 自転車の鍵を握りしめ家を出る。 今日も曇りか……でも昨日よりは晴れている。 「薺のおかげ、か」 自転車に跨がりもう1度時間を確認すると、ゆるゆると走り出す。 17時45分。 少し出るのが遅かったかもしれない。でも少しくらい遅れたほうが俺も棗も楽じゃないか。 そんな一ノ瀬さんに失礼なことを考えながらも、スピードは変えずに目的地を目指す。 「……着いた」 時刻は18時15分。  
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