3  皐Side

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インターフォンを押す寸前に、ジーンズのポケットが震える。 メール……? 薺? メールを確認すると、棗だった。 ……え? 棗? ま、待て。慌てるな、俺。 深呼吸をして心を落ち着かせる。 内容はどうあれ棗から来た初めてのメールだ。 緊張しながらメールを開く。 『皐大丈夫? 道迷った?』 手の力が一気に抜け、スルリと携帯電話が落ちる。 カツンという音と、俺のため息が出たのはほぼ同じ。 …………はぁ……。 なんなんだよ、こいつは本当に。 携帯電話を拾い上げ、インターフォンを押す。 家の中から歩く……いや、走る音。 このまま取れるのではないかという勢いでドアが開く。 「こ、皐っ! な、え? えぇ? う、うわぁ…………」 「ご心配どうも」 自分の携帯電話を棗にヒラヒラと見せれば、棗の顔は羞恥で一気に赤く染まる。 「……どういたしまして」 ハァ、と深く息を吐けば、おぼつかない足取りでリビングに向かう。 心配のメールを送った矢先に俺が来たら、そりゃあ恥ずかしいよなぁ。その気持ちはわかる、わかるけども。そんな可愛い反応されたらこっちが困る。 俺も靴を揃えてリビングに向かう。 「麦茶と烏龍茶、どっちがいい?」 「……烏龍茶」 「なんだよ、その間は」 ハハッと棗が軽く笑う。 眉を軽く寄せ、目を細めると共に目尻が下がる。そして口角を上げた綺麗な笑い方。 そこらの女より、ずっと可愛いと思う。昨日、初めて会ったときは、ただ憎たらしいだけの奴だったのに。 棗はいとも簡単に俺の心を動かしていて。 俺も、悪くないな。なんて思ってしまう。 初めての感覚。 堪らなく心地良くて、 「はい、烏龍茶」 笑顔で烏龍茶を差し出してくる。 俺は、棗の腕を思いっきり引き寄せる。 堪らなく愛しいと思う。  
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