3  皐Side

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「……皐?」 不安そうな声。 ギュッと抱きしめると、皐の体が強ばる。 「痛いっ! 皐、痛いよ!」 「嫌がらないんだ?」 ハッと息を飲む音。 棗は、俺に安心感を抱きすぎだよ。 皐だから、平気。 皐だから、大丈夫。 昨日、あんなことされたのに? 昨日、散々弄られたのに? キスもした。体も触った。 なのに、なんでそんなに普通なんだよ。距離を置こうと思えよ。気持ち悪いと言えよ。 俺は、恋愛の対象として見られてはいないのか? 結局、遊びだと思われているのか? だから、そんなに安心しているのか? ふざけるな! 俺は、棗が好きなのに!! 「……嫌がれないよ」 聞こえるか聞こえないかというくらいの大きさで呟く。小さな割に、ハッキリとした口調。 その答えが理解出来なかった俺は、さらに棗に問う。 「なんで?」 そう訊くと、少し戸惑いながら、顔を赤らめながら、口を動かす。 上から見ると口の動きがまったくわからなくて、自分の手中から棗を解放した。烏龍茶で洋服が濡れてしまったが、そんなことは気にしない。 「……ぅに…………れ…………ゃ……じゃ…………った……ら」 聞こえてきたのは断片的な言葉。 「棗、もっかい」 早まる気持ちを抑え込みながら、なるべく静かに、優しい声色で尋ねる。 棗は顔を思いきり上げ、キッと俺を睨みつけると、なにかを決心したかのように息を深く吸い込んだ。 そして、誰もがビックリの言葉を言ったんだ。 「こっ、皐に触られるのっ、嫌じゃなかったからっ!!」  
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