3  皐Side

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ドサッとソファーに腰掛ける。深く沈み、ゆったりとした体制がとれた。かなり上質なものなのだろう。 リビングのドアが静かに開き、ひょこりと顔を出した救世主。 「もしかして俺、スーパーヒーロー?」 「おぉ、すごい助かった」 ニカッと笑うと俺の横に座る。 薺は棗よりは大きいが、やはり少し小柄で、まるで隣に棗が居るような…………まずい、待て。落ち着け。隣に居るのは薺だ。 「で、なんでまた? 俺に用?」 薺はチラリと俺を見ると、深いため息をついた。 「人の部屋だけじゃなく顔を見てもため息かよ。ほんと、失礼な奴」 「棗には、話したのか?」 俺のちょっとした罵倒にはまったく反応せず、話を切るいきなりの質問。しかも、なんのことなのかを言わないので答えようもない。 「なにを?」 伏し目がちに俺を見る薺は、本当に棗にそっくりで。いや、違うか。棗が薺にそっくりなのか。 「皐が育った環境のこと、とか……」 薺の質問の意味は俺の予想を大幅に越えるものだった。俺はてっきり、俺の気持ちを棗に伝えたのか、とかそういう類の質問かと思っていた。 それが、この質問だ。薺とは、このことは余程のことがない限り口にしないという暗黙の了解がある。 「まだ会って2日だ。言ってるわけないだろ」 「……言う予定は?」 「あったよ」 ふ、と薺が寂しそうに微笑めば、俺の心はささくれが出来たようにチクチクと痛む。 「過去系、か。まぁ、それでも良いほうなんだよな。過去を共有しようと思った奴が俺以外に出来たのなら。寂しいけど」 「薺のは不可抗力だけどな。見られた上にお前の目は反則だ。隠すことなんて出来ない」 ハハッと軽く笑うと、すぐにまた寂しそうな顔に戻る。 「今日は、皐に俺のカッコ悪い所を見て聞かせてやろうと思ったんだけど……また今度ね」 「薺の格好悪い所なんざいつも見て聞いてるつもりだがな」 「お前……スーパーヒーローになんてこと言うんだよ。ま、いいや。我慢したのに免じて許してやろう。ん、じゃあ俺帰るわ。もう用ないし。またな」 スッと立ち上がり、リビングのドアを開ける。最後に皮肉たっぷりに嫌みの1つでも言ってやろうと、薺に向かって言葉を投げかける。  
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