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俺はコップにお茶を注ぎ、階段をのぼる。
なんで俺がさつきのためにこんなことっ!
わざと大きな足音をたて自室の前に立つ……が、両手が塞がっていて開けられない。
「おい、さつ……じゃなくて、檜嶋さん。開けて」
数秒後、ガチャリとドアが開きその奥に立つのはニヤリと笑うさつき。
「なにニヤけてんだよ。気持ちわりぃ」
「お前って、ああいうのが趣味?」
さつきはクイッと親指で後ろを指す。
こいつ、母さんが居るときと言葉遣いが違う!
確か、メールもこっちだった!
2重人格者かテメェは!
俺はさつきの指す方を見る。
そこにあったモノは
「……あっ!」
俺がこよなく愛す、大好きな大好きな
B L 漫 画 !!!
しまい忘れたんだ!
な、なんでよりによってこんな奴にっ!
絶対にバラされる……!
いや、待て。
落ち着くんだ、棗。
カバーこそエロいが、1人は女の子っぽい顔をしているんだ。
中を見てなきゃ、BLだとはわからないんじゃないか?
背筋に汗が伝うのを感じながら、必死に平静をよそおう。
皐は顔から笑みを消すと、ドアを全開にする。
「まぁ、入れば?」
俺の部屋だよっ!
偉そうにっ! 何様だっ!
と、言いたいところだが、中を見られている可能性があるので黙っておく。
「茶」
「どうも。……なに?」
俺がジトーッと見ているとさつきが気付く。
「中、見た?」
「なんの?」
「コレ」
俺は傍らの漫画を手に取りさつきに見えるように胸に抱く。
「中は見てねぇよ」
「ほ、ほんとっ?」
まだ信じるなっ! 棗っ!
さつきは2重人格者だっ!
「ほんと。俺は嘘が好きじゃない。……まぁ、いいんじゃねぇの? 年頃のガキならエロ漫画の1つや2つ読むもんだろ」
よかったーっ!!
さつき、意外にいい奴じゃん!?
「棗。茶、おかわり」
「はい、ただいまっ!」
俺はコップを手に取り1階へ。
俺は、限りなく馬鹿だった。
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