2  棗Side

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お茶を注ぎ、コップとポットをお盆に乗せて2階にあがる。 お盆なら片手で持てるだろ? さすが、俺! 頭が冴えるぅっ! ガチャリとドアを開け、部屋へ入る。 「檜嶋さんっ! おかわり持っ…………」 手の力が抜けお盆を落とす。 お茶がこぼれ、カーペットに染みを作る。 普段の俺なら、急いで拭くところだが、今はそれどころじゃない。 さつき……いや、 檜嶋 皐がBL漫画を読んでいた。 「これ、BL?」 「……っ!」 バレたっ! ……いや、まだだ! まだ、誤魔化せる。 黙ることは、肯定。 喋れ! 棗! 「違うよっ。どこ見て言ってんだよ。女の子だろ?」 俺はなるべく、明るく言う。 明るく言ったほうが、誤魔化せそうな気がしたからだ。 「……胸、無いんだけど」 さつきが俺に突き付けたのは、絡みのシーン。 いわゆる、受けの子の服ははだけ、胸が見えている。 真っ平ら。 貧乳だとかそういう問題ではない。 思春期を迎えた女の子にあるはずの胸の膨らみがまったくないのだから。 誤魔化しようがない……! 「えっ、と」 「へぇ。お前ってそっちだったのか」 「ちがっ!」 「俺も、かな」 へ……? 思いっきり引っ張られ、ドサッとうつ伏せに倒れたところを、肩を掴まれ半回転。仰向けに寝転がった体制になった。 「まぁ、抱くなら女だけど」 「いや……」 「でも女は色々と面倒臭いからな。避妊とか」 「あの……」 そんな語らなくていいからっ! まず、この状況を説明しやがれっ!! 俺の上には、さつき。 さつきの下には、俺。 「お前、経験は?」 「へ? 無いことはないけど……」 もちろん、女の子と。 手を繋いだことだってあるし、一丁前にキスだってしたことある。 まぁ、舌もいれてはないし、ヤッたこともないのだが。 「ふぅん?」 俺の言葉を聞くと満足そうに笑う。 その笑顔の中には、なにかを企んでいる子供のような無邪気さも混じっているように見えた。  
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