見た目で人は判断出来ない

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「マロンさーん、今日は行き先違うから気を付けてね」 「ああ、ちゃんと組長から聞いてますから平気っすよ。それよりその呼び方。やっぱり恥ずかしいんすけど」 車のミラー越しに見えるマロンさん――本名、栗山大輔さんがばつの悪そうな顔で笑った。相変わらず笑窪の可愛い兄ちゃんだ。 「マロンさんはマロンさんなの!それ以外なら……毬栗野郎もしくはマカロン」 「マロンでいいっす、マロンで」 大袈裟に項垂れると赤信号で車が止まった。マロンさんは自然な流れで煙草に手を伸ばす。 それと同時に私は身体を乗り出して手から煙草をひょいと取り上げた。 突然の行為に、ああっ、と声が漏れた。 「すいません!!お嬢」 わたわたと焦りながら謝るマロンさん。やっぱり車の中で吸われると煙臭くて堪らないもん。だから舎弟さん達には極力吸わないようにしてもらっているのだ。 しかし他の舎弟さんに負けず劣らず、マロンさんもかなりのヘビースモーカー。 やはり何度言われても生活の一部となった喫煙はなかなか抜けないのだろう。 「あっマロンさん信号、青!」 ああっすいません!!とまた謝る、そんなやり取りを繰り返しているとこれからお世話になる、名前は忘れたがその寮に到着した。 キャリーケースを渡してくれたマロンさんに御礼を言って私は車を降り、頑張ってくだせぇと励ましの言葉を残した後ろ姿を曲がり角で見えなくなるまで見送った。 目の前の建物を一瞥する。 「さ、つ……皐月寮?」 普通に豪華な一戸建て。学生寮にしては凄くお金かかっているようで至るところに洗練された美しい装飾がなされている。 も……もしかして、この学校も負けず劣らず金持ち学校?てか事前情報が少なすぎるわパパ!! 私はこれから先のことに対して不安を抱えながら、ドア横のチャイムをゆっくりと押した。
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