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「やっぱり煮干し、ない気がするからキスで我慢ね」
触れるだけのキスをするとすぐに美男子は離れた。そしてドアの鍵を開けて此方を振り返ると中に入るように促す。
いや……ちょっと待て。ナチュラルに何事もなかったのように流したけど、今のはやっぱりキスですよね。
「なっ。わ、私のファーストキス!初めては好きな人としようと決めてたのに!!」
やっぱり人工呼吸とかそういう類いの行為ではないですよねっ!?!?
「ふ~ん。だったら俺を好きになればいいだけでしょ。単純明快なことじゃん」
どうやら美男子には常識がきかないようだ。ほらほら早くーと悪気も無さそうに私を呼ぶ。真っ赤になっている自分が馬鹿らしくなった。
それでも殴りたい衝動に駆られなかったのは先程の意地悪な笑顔ではなくて、子供みたい無邪気な笑顔だったからかもしれない。
「てか荷物凄いね。夜逃げ?」
んなわけないでしょが。
ボケーとしていたら手を差し出されたので握手を求められたのかと思い握ってみる。
するとマジで馬鹿?と頭をコツンと叩かれた。
意外と本気で叩かれたことに痛がる私を横目に、美男子は私のスーツケースを寮に運び入れていた。
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