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「惣治君」
店長の金剛寺百合さんがボクに声をかける。
「ようやく上がりですか」
「そうよ。今日もしっかり働いてくれて助かるわ」
「いえいえ」
社交辞令を交えながら会話を成り立たせながらも、従業員が着る制服(エプロンだけだが)を脱ぐ。
「惣治が頑張るから、俺の仕事が減る。大歓迎だぜ」
「暇人さんは本当に暇人さんになってしまいますよ」
「別にいいぜ? 暇人ができるなんて最高じゃないか」
日向葵こと、暇人さんは、ぐだ~と椅子に座り、大きくあくびをする。
この人は本当にダメな人だと思う。
「日向、今日は惣治君がいるからいいけど、他の日にそんな態度だったら分かるわよね?」
「へぇへぇ、分かってますよ」
嫌に怖い笑顔を浮かべる百合さんに、暇人さんは普段通りだるそうに返事する。
「じゃ、ありがとうございました」
ボクが先に店を出ようとした瞬間――
「すまない」
漆黒のポニーテールを揺らしながら、少女が店に入ってきた。
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