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「この店はもう閉店なのか?」
きりっとした声が店に広がる。
少女はボクと同じぐらいの身長で、顔は可愛いけど凛々しくもあった。
「そこの少年、どうなんだ?」
おそらくボクに問いかけてるのだろう。
なら――
「はい」
こうやって短く答えるのが、今のボクには適切だろう。
「そうか。邪魔したな」
少女は、あっさりとした感じに言うと、そのまま振り返って店を出て行った。
「なんか、かっこいい子だったな」
暇人さんがボクに向かって言ってくるが、ボクの耳を通り抜けるだけ。
「おい、惣治……?」
胸がどきどきして苦しい。
いつもの女性恐怖症なら、すこし体が強張るだけなのに、なんでこんなに激しいんだろう?
ボクはどこかおかしくなってしまったのだろうか?
「惣治君、どうしたの?」
百合さんが聞いてくる。
そうだ、人生経験が(年増という意味で)深い百合さんなら、今のボクがどうなってるのかわかるかも。
「百合さん……ボク、おかしいんです」
「へ……?」
いきなり公言するボクを、きょとんとした表情で見つめてくる。
「さっきの女の子を見た瞬間、胸がどきどきし出したんです。……今も、どきどきが収まらなくて…………」
「へぇ……」
ボクの話を聞いて面白そうなものを見るような目でボクを見る百合さん。
ついでに、百合さんの背景で暇人さんも同じようにボクを見ていた。
「惣治、それは「恋よ!」
暇人さんがなにか言おうとして、百合さんがそれを遮りながら叫んでいた。
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