第一部

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理由を知らなかった。 理由を知る理由もなかった。 理由を知る術もなかった。 なぜ俺達は争うのか? 神が自らの身を砕いて、その血と肉から俺達を創り、それぞれに運命を刻印した。その“戯れ”が生命の起源なら俺達の運命は俺達が生まれる遥か昔から決まっていたのかも知れない。 もしも、それが真実なら俺は神を赦さない。いや、赦せない。 その争いが始まった理由は誰も知れない。大事なその部分の記憶が欠如している。鳥が無意識の内に空を飛べるようになるのと同じ。誰かに教えられた訳ではなく、生まれる時、いや生まれる前から争うことと争う敵を本能的に知っていた。ただ何故争うのか、その理由がわからないだけ。 疑問? そんなものない。本能というものが私達を尽き動かしているのだから疑問に思う暇さえない。空腹を感じ、何かを食べるのと同じ。ある種の欲求と快感。留まることと満たされることを知らない欲求と快感。 私達は“ケダモノ”と何ら変わりない。
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