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全身泥まみれになったフェンが立ち止まったのは川の辺だった。雨で水かさが増し、黒い濁流がフェンの行く手を阻んでいる。
フェンはもう一度自分が逃げて来た道を振り向いた。木々が鬱蒼と茂り、奥のほうには深い闇が広がっている。その闇のさらに奥。恐怖からの幻かもしれないが、吸血鬼の死骸がフェンを睨んでいるのが見えた。
フェンは濁流に飛び込んだ。いや、落ちたに限りなく近い。濁流は容赦なくフェンを飲み込んだ。必死にもがくが怪物と化した濁流の前にフェンは余りにも幼く無力だった。
やがてもがく力も無くし、流れに身を任せフェンは胃袋へと流されていった。
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