プロローグ・15年前

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 坂野正隆は急いでスーツに着替え仕事に向かう準備をしていた。  奥の部屋では由希と隆が気持ちよさそうに寝息を立てていた。 「それじゃあお父さん行ってくるよ…」  寝ている二人を起こさないように小さな声で言い、二人の子供の寝顔を確認し、部屋を出た。  今日は正隆には会社で重要な会議があるため、いつもより早めに会社に向かおうとしていた。  急いで準備を整え玄関に向かうと慌てた様子で早希子が走ってきた。 「ダメ! 今日は仕事に行っちゃダメ! 嫌な予感がするの……」  真剣な顔で早希子は言った。  こういうときの早希子は信じた方がいい。 今までの経験から正隆はそう感じていた。  今までの経験というのも、早希子にはどうやら妙な力があるらしく、結婚前から、少し勘が良いとか、鋭いとか、そういう言葉では収まらないほどの発言をする事が良くあった。  現に一度休日家族で遊園地に出かけようと思っていた矢先に早希子が、切迫した顔で出かけるのを止めた事があった。  その時は、子供たちは泣き出してしまったりして大変だったが、その日の夕方のニュースを見て愕然とした。  大型トラックの横転による大規模な玉突き事故の報道された。  その事故は正に自分達が出かけようとしていた時間、その遊園地に向かう道のりで起きた事故だった。
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