9人が本棚に入れています
本棚に追加
それだけじゃない。
早希子は連絡をしなくても正隆が何処で何をしているか、何処に行こうとしてるかを分かってしまうことが良くある。
そんな力があるためか早希子は正隆と出会う前は、周りから一歩引いた存在になっていた。
しかしその点では正隆は隠し事などは一切無い真面目な性格で、早希子の力に関しては何の嫌気も無く付き合う事ができた。
ただ今日は、正隆にとって重要な会議があった為、急に休む訳にはどうしてもいかなかった。
必死に止めようとする早希子を説得し、普段は車で通勤している所を、今日は念のため電車で行くと告げた。
早希子自身も何が起きるかまでは分からないようだった為、了承せざるを得ず、正隆に気をつけるように念を押し、見送った。
母親の必死の様子に、娘の由希と息子の隆は目を覚ましてしまい、後ろから二人の様子を見ていた。
その日の正午過ぎ、都内の工場でガス爆発のニュースが報道された。
「今日正午過ぎ、東京都の工場にてガス爆発が発生し、近くの会社の会社員3名がそれに巻き込まれ、意識不明の重体で病院に運ばれましたが、まもなく死亡しました。お名前は高木義則さん、村井紀子さん、坂野正隆さん……」
その瞬間、早紀子はその場に崩れ落ちた。
由希と隆はその様子を、そんな母を見つめて立ち尽くしていた。
最初のコメントを投稿しよう!