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「兄さんって、なんだかんだ言って、成っちょと仲いいんじゃん?」
生徒会室で溜まったプリントをまとめていると、那智が急にそんなことを言った。
僕と成宮の仲が良いわけないだろう。馬鹿馬鹿しい。
「別に、仲が良いわけでは…」
「嘘。楽しそうに言い合いしてるじゃん」
那智は笑いながら僕の方に近寄ってくる。だがその目は、笑っていない。まるで底のない沼のような、暗くて冷たい目をしていた。
「な…那智…?」
今までに見たことの無いような表情の那智に背中に悪寒が走るのがわかり、がたんと立ち上がって後ずさる。
しかし、背後には壁。那智は僕を追い詰め、逃がすまいと壁に手をつくと口元を歪めてそっと耳に口を近づけ…
「僕がいるんだから、慧は成宮なんかより僕と話してろよ
――慧は渡さない。慧は僕のものだ」
そう囁くと那智はにっこりと笑みを浮かべたまま僕を見つめる。
今の那智ならきっと敵だと認めた輩を即座に殺してしまうくらいの決意があるのだろう、そう感じられて僕は知らず知らずのうちに頷いていた。
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