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涙が、止まらない。
リボルバーを持っていない方の腕で涙を拭いてから見た慧の顔は怯えの色を消して優しく微笑んでいた。
まるで、おれが銃を向けている理由を知っているかのように。
何で、笑うの…慧。
悪いのは全て、おれなのに。
春に恋に落ちて、夏にはお祭りに行ったり海に行ったり補習をしたり。
秋の夜に初めて身体を重ねて。
冬に全て、終わりを告げる。
この気持ちとも、さよなら。
撃鉄を起こして指を引き金にかける。慧とさよならするために。この気持ちにも終わりを告げるために。
ふるふると小さく震える人差し指を寒さのせいだと言い訳しながら力を込めていく。
「…ごめんね、慧」
だいすきだと、気持ちを込めて引き金を引く。
弾が慧の胸を吸い込まれるように貫いた刹那、慧が小さく口を動かしたのが見えた。
「 」
どさりと音がして慧はその場に倒れ込む。真っ白な制服が流れ出る血液によって赤く染まっていく。
おれはそれを上の空で見つめながらリボルバーを下ろす。
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