私の夜

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どん…どん…どどん… 遠くからジンタの音 ピエロが近づいている ピエロは悲しい笑顔で ピエロを捜しているのだ 眩しいほど黄金色の月の下で 寝苦しい熱帯夜の星の下で 楽しそうに踊りながら 陽気に歌いながら どん…どどん…どん ピエロが近づいている ピエロは愉快な泣き顔で ピエロを捜しているのだ 黄金色の月明かりを身体に受けて 楽しそうに見えるように踊りながら あたかも愉快に見えるように歌いながら (ピエロの皮を被ったピエロ)は 不器用に踊っている 余った皮が不快そうに 踊っている (ピエロの姿をしたピエロ)は 所詮(しょせん)偽者であるから永(なが)くピエロでいる事は難しいのではないかと己も他のピエロ達も考えている (ピエロでできた玉)で(玉乗りをするピエロ) (ピエロでできた玉)は 四十五人のピエロの塊 体内に寄生した無数の線虫が分泌する粘着性の強い物質により球状を保っている (玉乗りをするピエロ)は 足を踏み外すと玉に取り込まれる (ピエロみたいなピエロ)は なり損ない 薄皮を剥いではいけない それはピエロが消える時 それはピエロがピエロでなくなる時 だいいち生皮ではピエロとは言えないからだ どん…どん…どどん… ピエロは今目の前 私の膝ほどの高さしかないソレらは 私を一斉に指さした あぁ…これで私もようやくピエロになれるのね ただ ピエロになるに辺り 一つだけお願があります やはり玉にはなりたくないのですそれだけは避けたいのですこれはいっしょうのおねがいですどうかおねがいしますおねがいします  
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