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ひらひらと舞い落ちる花びらが桃色の絨毯へと変わる。
ここは人々を魅了する京の町。
商人の威勢の良い掛け声や行き急ぐ人の足音、庶民達の団欒など様々な音や色で溢れていた。
客が外にまで行列を作る甘味屋がある。
そこに、とある4人組がいた。
「まさか、土方さんも来てくれるなんて思わなかったよー。」
そう団子を頬張りながら嬉しそうに漏らす小柄な少女にも見える少年。
土方と呼ばれる男は、凛々しく美しい顔を妖しくほころばせながら
「この店の主人の娘が、これがまた器量良しなんだ。
それに、その娘にいつでも来いって言われてんだよ。」
と、艶やかな笑みを作り少年に応える。
すると、整った顔立ちをした青年が話に割りこみ、
「土方さん、女遊びもそれぐらいにしておかないと、何時か本当に刺されますよ?
ねぇ、平助?」
同意を求められた少女のような風貌の少年はウンウンと同意だというように深く頷く。
そのやり取りを見ていた落ち着いた雰囲気を持つ青年もそれに呼応する。
「それもそうだっ。総司の言うことが最もだね。」
「流石、新八さん!話が分かりますね~。」
クスリと微笑む総司。
「やっぱりみんなそう思うよね??」
平助は眩しい笑顔を新八に向ける。
己の悪口で盛り上がる3人を、話題の中心である土方は気にした様子もなく、我関せずというように鼻を鳴らしお茶を啜る。
この騒がしい4人組は、江戸時代末期頃、歴史の片隅に名を刻んだ新撰組と呼ばれる組織の隊士たちである。
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